病院全体で文書管理を進めていくための方策 <専門家コラム>

組織管理の必要性と導入・推進ステップについて

病院における文書管理を導入するための方法について地方独立行政法人 明石市立市民病院 医療安全管理室 副室長 田中宏明先生にお話しいただきました。田中先生は、当時勤務をされていた病院でTQM注1推進室メンバーに抜擢されたのを機に、以降、大阪大学医学部附属病院、明石市立市民病院において医療の質、医療安全に関する業務に携わられています。QMS-H研究会においては、医療機関における文書管理の在り方を中心に研究を行い、研究者と実務者両方の立場で文書管理を牽引されています。

注1:Total Quality Management

田中宏明氏
地方独立行政法人
明石市立市民病院
品質管理室 室長

近畿大学大学院薬学研究科修了。医療法人医誠会城東中央病院薬剤科に入職後、2006年よりTQM推進室。大阪大学医学部附属病院中央クオリティマネジメント部を経て、2017年より現職。専門はプロセス管理、文書管理。

数千の文書の体系を効率的に構築することが、文書管理実現のKEY

 当院は2018年度にISO9001を取得しました。これに関連する活動の経験と、QMS-H研究会で培われたノウハウを基に、文書管理を推進する方法についてお話させていただこうと思います。
 組織的な標準化の仕組み作りを実現する全体的な流れは、下図5つのステップに大別されます。それぞれのステップで重要なポイントを述べていきます

文書管理

 まず、「導入体制の準備」です。これは組織的な標準化を進めていくうえで基盤になる活動です。課題を分析し、体制を整備する時間を十分に取り、院内で議論する必要があります。
 我々は病院の課題意識を可視化するアンケートを考案し、富士ゼロックスシステムサービスからの提供、支援も可能な体制を準備していますので、お問い合わせいただければと思います。

 文書管理というのは、紙文書をすべて電子ファイルで管理すればすぐに運用できるというようなものではありません。病院には何千、何万という文書が存在し、それら文書をすべて洗い出し、効率的に分類・整理し、マスタ化するという「文書管理体系の構築」が文書管理実現のための最重要要素の1つになります。文書一つ一つに対する主管の部署・管理レベル・業務分類など設定、1文書1ファイルであること、分かりやすい文書名の工夫なども必要です。以上のことを踏まえながら数千の紙文書のマスタ作成を進めていくわけですが、これらの作業は現場ならびに事務局に最も負担がかかる工程であり、挫折するポイントでもあります。
 当院では、富士ゼロックスシステムサービスとQMS-H研究会の共同開発を行った導入支援ツールによって、従来の手作業による手間と時間から解放され、かなりの負荷軽減が実現しました。指定のフォルダへ格納した文書データが自動で一覧化され、それらが必要な文書か否かの判断、文書の名称変更などが比較的容易に実行できました。システム導入前の文書体系の構築から文書管理の取り組みを支援してくれるのが富士ゼロックスシステムサービスの特長の1つであると感じています。

文書管理

活用される文書管理システムに求められる要件とは

 文書管理を行い、その後活用されるための要件のひとつが体系管理です。各文書がどういう業務を表しているのか(業務分類)、組織全体で利用するものなのか、複数部門または単一部門なのか(管理レベル)、主管・関連部門はどこなのか、そしてマニュアルなのか規程なのか、または外部文書なのか(文書タイプ)を定める必要があります。
 そして、もうひとつの要件が文書の一元管理です。文書作成から承認・周知・保管・改訂、そして廃棄するまでの一連の流れを決める必要があります。この中で重要なことは“誰に”承認してもらうのか、ということです。それを考えるヒントとして、我々は「文書×承認者マップ」の作成を提案しています。病院の業務は複数の部門や委員会で行われていると思います。病院機能評価を取得している病院の皆さんは、組織図や職務分掌はお持ちでしょう。それを業務ごとにマッピングしてみることで、それぞれの業務の責任・権限が明確になってきます。そのマップを参考に、作成された文書に対して承認をシステム的に回す、というのが我々の考え方です。業務一覧については、書籍「医療安全と業務改善を成功させる病院の文書管理実践マニュアル(メディカ出版/2017年発行)」でも紹介しています。富士ゼロックスシステムサービスのシステムでは、これらの考え方を踏襲して一元管理、体系管理ができるようになっています。
 以上のことから、組織的な標準化、つまり文書管理は文書を集めて管理するだけの取り組みではありません。文書管理を始めると組織を考えるようになり、組織マネジメントを意識し、組織的な改善を考えるようになるはずです。
 最後に、「文書管理システムの構築」をするうえでの注意点についてお話しします。文書管理システムの運用時には職員(ユーザー)情報の管理が重要になってきます。電子申請、承認の機能などを活用する場合には、職員の所属する部門・役職・職種・委員会・メールアカウントなどといった情報が必要になります。これらすべての情報は一元管理されていることは少ないのではないでしょうか。人事・給与管理システムや電子カルテシステム、グループウェアなど、それぞれのIDが異なる、というのはよくある話です。文書管理の承認プロセスに必要な情報として、どのシステムから連携して情報を受け取るか、または文書管理システム用に職員情報のマスタデータを別途作成するのか、情報システム部門と連携のうえ、管理方法を検討する必要があります。
 私が文書管理に携わり約10年、いろいろと悩み苦労したところを改善するために、富士ゼロックスシステムサービスと共同研究を行い、支援ツールを開発してもらうなど対応を進めてきました。その結果、これまでより効率的に進めることができる環境が整ったと考えています。

※本コンテンツは2019年6月20日に開催した医療機関様向け「医療安全と業務改善を成功させる 病院の文書管理 実践セミナー」におけるご講演内容を元に執筆いたしました。

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